一橋・津田塾大学陸上競技部 中長距離パート

距離が伸びた今年は目標にあと一歩届かず

10月13日、立川昭和記念公園にて第95回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会が開催された

天候は曇り、気温17度とかなり良いコンディション下でのレースとなった。

本学からは上野(4)、久保井(4)、森下(4)、佐藤(3)、山口(3)、萱原(2)、佐々木(2)、清水(2)、田中(2)、毛利(2)、寺田(1)、長友(1)の12名が出走。

今年から20kmからハーフマラソンに変更された予選会。本学は総合記録12時間0分0秒、及び20km通過時点での昨年の記録11時間23分25秒を目標タイムとして設定し、レースに臨んだ。

着順でレースを振り返っていく。

チーム1番手で帰ってきたのは昨年と同じく佐々木。入りの5kmを16分5秒と積極的な展開をし、徐々にペースは落ちるが大きく失速することはなく理想的なラップタイムで1:09:09の好タイム。20km通過では歴代10位となった。佐々木は昨年末から慢性的な怪我に苦しみ、春夏のシーズンはほとんど走ることができていなかった。それでも夏合宿からは練習を積み上げ、27大戦などの実戦も通して長期的スパンでしっかりとこの予選会に合わせてきた。1年で一回り以上も強くなった競技力とメンタルで、新中長チーフ、エースとしてチームをさらに高みに導いてもらいたい。同時に、あと2回残っている予選会で佐々木自身の学連選抜入りも期待できることだろう。

2分ほど開けて2番手でゴールしたのは久保井。スタート直後に形成された大集団に入って落ち着いたペースで展開すると、市街地では集団を引っ張り12kmで山口・毛利と共にペースアップして抜け出す。公園内に入っても全く動きが鈍ることなく、他大や一橋勢を突き放して会心のPBでフィニッシュした。久保井は春のトラックシーズンから安定した調子でPBを出し、合宿でも十分な練習量を積み昨年からの成長を感じさせていた。9月に一旦調子が乗らない時期があったものの、その後それ以上に盛り返し最後の予選会で最高のパフォーマンスを見せてくれた。チームの全体的な実力向上は、この人が積極的に全員を押し上げて引っ張ってきてくれたから成せたものだろう。

3番手は山口。抑えたペースで主に久保井・毛利と共にレースを作り、余裕を持って15kmまでを通過するが久保井のペースアップに離されてからは苦しくなった。10km単位でのネガティブスプリットは何とか保ち、2年前の記録を僅かに上回るタイム水準でフィニッシュした。山口は今年も昨年同様シーズン前半に伸び悩み、今年は9月に大きな怪我もして予選会を見据えた練習がこなせなかった。積んできた練習と経験が幸いし、9月末にどうにか怪我から復帰して最低限のパフォーマンスを見せられたがチームを引っ張るには至らず。来年は出走できれば4回目の予選会経験者となるので、チーム・個人の両面共に成長を感じられる走りを果たしたい。

4番手は毛利。毛利も公園内で若干苦しくなったが10km単位でイーブンのラップをしっかりキープ。まとまって走ったこの3人が大きな差を開けずにゴールできたことでチームのタイム短縮に繋がった。毛利は春シーズンまで予選会標準タイム(10000m 34’00)を突破できていなかった選手だが、これまでの積み上げが開花し夏前に一気に成長。5000mも難なく15分台を出し、9月のセレクションでは学内1着と、文句なしに長距離の中で最も成長した選手である。予選会では絶好調の時と比べて少し物足りない部分が本人にもあったと思うが、それでも去年の20km通過を3分上回っていることからも実力の向上は見て取れる。今後は他選手を引っ張っていく立場としてどんどん成長を続けていきたい。

ここから1分開けて、5番手は清水。少し速めのレース展開にも物怖じせずに安定したラップで走り続け、そのままゴール。昨年はラスト5kmで失速したが今年はしっかり落ち込みをカバーすることができていた。暑さに弱く夏の前後は満足なパフォーマンスが出せず非常に苦しんでいた清水だが、昨年11月以降8回PBを更新しているなど要所要所ではしっかり成長を見せてくれる貪欲な選手である。年々成長している精神面を軸に、継続した成長に期待したい。

6番手は佐藤。一橋の最後尾集団の中心としてレースメイクし、集団がばらけてからも落ち着いてレースを運んだ。公園内では前の一橋選手を次々拾っていきしっかりPB更新、チームタイムを押し上げた。佐藤は春シーズン苦しむことも多かったが、夏前に自分の感覚を取り戻し合宿以降はどんどん調子を上向けていった。9月TTで内定を獲得し、今年の3年生ではただ1人着実に準備を進められていた。今年が初の予選会でありながら徹底した分析と評価で冷静にレースを運び、集団走のブレイン的役割としてタイムの底上げに貢献した。本学長距離を代表する選手と言えるオールラウンダーの佐藤の成長で、今後の中堅層の実力向上にもさらなる期待が掛かる。

僅かに遅れて7番手は上野。後方集団で15kmまでは完璧な展開、ラストでペースダウンしたものの遅れを最小限にカバーした。上野は2年時に予選会メンバーに入っていたものの出走できず、昨年は1年間以上の怪我に苦しんだ。復帰してからはここ1年間で一気に勢いを取り戻し、予選会標準切りやセレクションでの枠を自ら勝ち取ってきた。今回が最初で最後の箱根予選となったが、この経験を踏み台にして更なる飛躍を見せてほしい。

8番手は田中。序盤は2番手の集団で展開していたが10kmでやや苦しくなり、ペースを落として調整したが伸び切れなかった。田中も春先怪我に悩んでいた1人で、合宿前に復帰してからは一気に状態を上げていた。9月は絶好調といえる状態に仕上がっており2番手集団を引っ張る実力もあったが、うまくピークを合わせられなかった。来年はこの悔しさをバネに、2回の予選会を出走している2年生としての経験を活かして引っ張っていくことが期待される。

9番手は長友。予定より速めのペースで入るも積極的に集団についていき、15kmまで素晴らしいレース展開だった。ラスト5kmでペースが落ちたが9番手に食い込む力走。長友は1年生、かつ今年から陸上競技を始めた選手であり、今年は来年の標準切りに向けた下積みと経験の一年になると思われた。しかし夏合宿を上級生に劣らずしっかり走り込んで以降は才能が開花、レースの度に成長を見せ9月末のセレクションにおいて余裕の標準切りと補欠でのメンバー枠獲得を同時に達成。毛利と共に圧倒的な成長を見せた半年だった。予選会の出走も高島との交代が決まったその週のことであったが、冷静さを欠くことなく堂々と走り切った。彼の15kmまでの5km毎のタイムは全て自己ベストである。来年は更に力を伸ばし、チームの主軸に加わっていってほしい。

10番手は寺田。後半チームでの集団走に入りつつ、中盤ペースを落として展開。公園内では落ちてきた選手を拾いつつペースアップ、上げ切ってフィニッシュできた。寺田は競歩と並行して練習を積んできた選手の1人で、中長パートの戦力源となった競歩パートから唯一の出走であった。1年生ながら競歩とハーフに向けた練習を共に行うハードなスケジュールをこなし、しっかりと力をつけてきた。当日も途中まで学内最下位を走りながらも、焦らずに力を溜めて最終的には10番手に食い込む非常にクレバーなレース運びであった。標準が難化し1年生の出走が厳しくなった今年からの予選会で1年生2人が良い走りを見せてくれたことは大きく、今回の経験を活かし将来の長距離の軸となっていくことが期待される。

11番手は森下。序盤は後方集団をリードしてペースを定め、集団で公園内に入るもそこで力尽きペースダウン。10番手入りはならなかった。今年最後の予選会、久保井と共に4回目の予選会経験者である森下は例年通りにしっかりと練習を積んで臨めていた。当日は集団の流れを決めチームに流れを作ったが自身は振るわなかった。今後残っているレースで1年時以来のPB更新を果たし有終の美を飾ってほしい。

12番手は萱原。スタート直後に集団の混雑に巻き込まれて転倒するアクシデントがあり、終始本来のリズムで走ることができず、ペースキープできずにゴールとなった。萱原も本来であれば前方集団に入ってタイムを稼ぐことができた実力を持つ選手である。予選会という舞台で全員が十分なパフォーマンスを発揮することの難しさを痛感させられた。来年は今回の経験を活かし、きっちりと自分の走りをしていきたい。

チームの総合タイムは12時間2分29秒と、目標としていたタイムに僅かに及ばなかった。しかし総合順位は34位と過去最高と思われた昨年を上回った。出場校数が昨年の49校から39校に減り、本学と同じ水準の選手が100人近く少なくなった今年の予選会で健闘したと言える。怪我やアクシデントもあり、昨年よりも厳しいレースとなった中でチーム全体が実力を発揮することできた。特に、10番手のタイム水準は昨年を1分近く上回り下位5名が1分以内のタイム差に収まっている。転倒した12番手の萱原でも10番手から1分差と、まさにチームとしての総合力の向上が確かめられた結果である。今年一年は予選会下位層の底上げを重点的に意識してきていた。標準切りの人数は最終的に17人となり、複数回のセレクションによるメンバー選考で、安定した結果を残す土台をしっかり作ることができたことが今回の結果に表れた。

今後の課題としては、1つは下位層の底上げを最大限に活かせるような上位層の躍進が挙げられる。今回は昨年力走した高島・山口の直前の怪我などでフルメンバーとは言えない状況であった。佐々木に並ぶ、それ以上のタイムで走ることができる選手の育成が総合タイム短縮のための直近の課題と言えるだろう。もう1つとしては、下位層の更なるレベルアップ。今回のレースは全体的に高速な流れで、15km時点での総合タイムは昨年を上回っていたものの終盤の失速が避けられなかった。前半を抑えすぎずに終盤まで耐えることのできる強さを今後の練習で磨いていきたい。

本学は既に来年の予選会出場権を獲得しており、丸一年をかけてじっくりと予選会を見据えることができる状況にある。経験豊富な選手が揃った来年を勝負所として、一年を通じて準備していきたい。

最後になりましたが、朝早くから寒い中応援・サポートをしてくださった全部員・OBOGの皆さま、本当にありがとうございました。この大舞台で、沿道からの皆さまの声援が本当に選手達の力となりました。来年こそ今年の記録を大幅に塗り替え、強くなった中長パートの姿をお見せできればと思っております。今後とも、ご声援のほどよろしくお願い致します。

山口雄大

個人順位 記録 氏名 備考
326 1:09:09 佐々木海(2) PB
362 1:11:02 久保井遼介(4) PB
367 1:11:22 山口雄大(3)
371 1:11:36 毛利陽人(2) PB
394 1:12:40 清水康太(2) PB
401 1:12:56 佐藤仰(3) PB
405 1:13:01 上野周平(4) PB
415 1:13:21 田中遼太郎(2) PB
417 1:13:34 長友勇樹(1)
424 1:13:48 寺田倖太朗(1)
434 1:14:22 森下尚耶(4)
440 1:14:42 萱原亮太(2)
総合成績 34位 12:02:29
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